知らないと損している!?和牛と国産牛の違い
2018/12/09
百貨店やスーパーで「国産和牛」という表示を見たことはありませんか?
これを見ている読者の方には、「国産なのだから、和牛なのは当たり前」だとお思いの方もいるかもしれません。
でも、国産の牛なのだから和牛とは限らないのですよ。
実は「外国生まれなのに国産だという牛」もいるし、「外国で生まれ育った和牛」だっているのですよ。
いったいどういうことでしょうか?
そこで今回は正しい「国産牛と和牛の違い」について説明します。
これを知っていると知らないでは、もしかすると損をしているかもしれませんよ。
●和牛と国産牛の違い
○「和牛」とは
和牛とは下記の品種のことをさします。
・黒毛和種(くろげわしゅ)
・褐毛和種(あかげわしゅ)
・日本短角種(にほんたんかくしゅ)
・無角和種(むかくわしゅ)
・上記4種に掲げる品種間の交配による交雑種
・上記4種に掲げる品種と品種間の交配による交雑種
これらは日本の在来種をベースに、海外の品種・国内の品種と交配を繰り返して改良された牛なのです。
つまり、上記で説明した牛であれば外国で生産されても「和牛」ということになります。
一般的に和牛は値段が高いものが多いです。
これは、和牛が食用の肉になるまで普通のものよりも多くの時間を要すること、飼育に手間がかかるため大量生産が難しいことなどが要因です。
そのぶん、美味しい牛肉として知られているのです。
ちなみに従来種として今でも残っているのは、山口県の見島牛(みしまうし)と鹿児島県の口之島牛(くちのしまうし)だけになってしまいました。
見島牛は大変貴重なことから、国の天然記念物に指定されています。
○「国産牛」とは
国産牛とは、品種に関係なく日本国内で飼育・育成された期間が最も長いものをいいます。
たとえ外国から輸入した牛であっても生きたまま輸入して日本国内で飼育した期間が一番長ければ全て「国産牛」になります。
一般的には、上記の和牛以外の肉用種、または乳牛と和牛をかけあわせた交雑種、乳の出なくなった雌の乳牛、オスの乳牛を指します。
●外国生まれなのに国産だという牛とは?
上記でも少し説明しましたが、もう一度、和牛と国産牛の定義について見てみましょう。
・牛とは「日本に昔からいた牛の種類」のこと
・国産牛とは「原産国が日本の牛」のこと
つまり、牛の原産国表示は、その牛が「どこで産まれたか?」ではなく「どこの国で一番長く過ごしたか?」で決まるのです。
外国で生まれ育っても、日本で過ごした時間が一番長ければ、国産牛ですし、反対に日本で生まれ育っても、海外生活が長ければ輸入牛ということになるのです。
ただし、現実的にはあまり数は多くありません。
なぜなら、牛を異なる国間で移動するというのは膨大な手間と時間がかかりますし、税関の手続きは複雑なため、あまりそれをやろうという業社はほぼいないからです。
●外国で生まれ育った和牛がいる?
これも最初で説明した通り、和牛とは日本の牛ではなく、「日本に昔からいた牛の種類」のことです。
もう一度、冒頭で説明した和牛の種類を御覧ください。
ここで分類される牛なら、どこで産まれ育ったとしても和牛です。
つまり、外国で生まれ育って、外国で消費されたというような、日本に全くえんもゆかりもないような牛だって和牛といえば和牛ということになってしまいます。
とはいえ、消費者から見たら、日本での育ったならまだしも、「日本に来たこともないのに和牛って…」と思いますよね。
そこで平成19年3月26日農林水産省は「和牛」に関するガイドラインを発表。
和牛の定義に、「国内で出生し、国内で飼養された牛であること」という条件を付け加えるようになりました。
(1 「和牛」と表示できる牛肉は ) 、①の要件を満たすことが、家畜改良増殖法に基づく登録制度等により証明でき、かつ、①及び②の要件を満たすことが、牛トレーサビリティ制度により確認できる牛の肉とする。
① 次に掲げる品種のいずれかに該当する牛であること。
イ 黒毛和種
ロ 褐毛和種
ハ 日本短角種
ニ 無角和種
ホ イからニまでに掲げる品種間の交配による交雑種
ヘ ホに掲げる品種とイからホまでに掲げる品種間の交配による交雑種
② 国内で出生し、国内で飼養された牛であること。
(出典:農林水産省「和牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン」
つまり、全く日本に来たことがない牛は証明できるとき「和牛」とは表示できなくなったのです。
とはいえ、この法律が適用されるのは日本国内のみなので、外国に行けば日本に来たことのない「和牛」は存在します。
ただし、最近では「WAGYU」と表記されることが多いです。
日本人の感情としては複雑ですが、それだけ日本の牛が高く評価されているということなので、大目に見ましょう。
ここまで見ていただいた方には既にお分かりだと思いますが、まとめると、和牛と国産牛というのは定義そのものが違っていて、「外国生まれなのに国産だという牛」もいるし、「外国で生まれ育った和牛」だっているということになります。
だけど、この定義の違いを分かっていると、ただの国産牛を和牛だと勘違いして高いお金を払うこともなくなりますし、逆に、和牛のはずなのに安いのはなぜだろうと悩むこともなくなるでしょう。
和牛と国産牛で美味しいのは?
結局のところ、和牛と国産牛でどちらが美味しいのでしょうか?
ここに挙げた定義を見たところ、牛の種類や原産国を名義しているだけで、味を保証しているわけではありません。
なので、和牛だからといって全てが美味しいとは限りませんし、国産牛が劣っているということはありません。
ただし、丁寧に育てられた和牛は、我々プロの業社から見ても、格別な美味しさを持つもの多いのは事実です。
特に、米沢牛や松阪牛のようなブランド牛ともなりますと、ブランドごとに厳密に管理された飼育方法をとっています。
例えば、米沢牛の場合は下記のような定義が設けられています。
米沢牛の定義
下記の条件をすべて満たしたものを米沢牛と認めて、枝肉に証明印を押印する。
1.飼育者は、置賜三市五町に居住し米沢牛銘柄推進協議会が認定した者で、登録された牛舎での飼育期間が最も長いものとする。
2.肉牛の種類は、黒毛和種の未経産雌牛とする。
3.米沢牛枝肉市場若しくは東京食肉中央卸売市場に上場されたもの又は米沢市食肉センターでと畜され、公益社団法人日本食肉格付協会の格付けを受けた枝肉とする。
但し、米沢牛銘柄推進協議会長が認めた共進会、共励会又は研究会に地区を代表して出品したものも同等の扱いとする。
また、輸出用は米沢牛銘柄推進協議会が認めたと畜場とする。
4.生後月齢32ヶ月以上のもので公益社団法人日本食肉格付協会が定める3等級以上の外観並びに肉質及び脂質が優れ ている枝肉とする。
5.山形県の放射性物質全頭検査において放射性物質が「不検出」であるものとする。(参考:米沢牛銘柄推進協議会)
これだけの条件を満たしてやっとブランド牛として市場に出すことができるのです。
和牛は、国産牛や外国からの輸入牛に比べて、飼育に手間や時間がかかるので、どうしても高額になってしまいます。
ただし、かけた手間や暇は確実に味となって現れているはずです。
それだけの価値があるのが和牛です。
誕生日や記念日など、特別な日にお試しいただいてはいかがでしょうか?